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​ ZINE
島の夢
 

多摩美術大学大学院研究室主催の、映画監督アピチャッポン氏によるワークショップに参加。
和歌山県紀南地方を旅し、その自然環境を体験。
半年後、旅の体験について旅の仲間にインタビューを行い、雑誌の形でまとめました。

Timeline           2025/7-2029/8

Tool                          Illustrator,Indesign,Photoshop

​One man program

ZINEについて

言葉の魔法、自然の体験、創作する人々、映画、記録、そして物語。
これはある東京から和歌山・熊野地方への旅と、その後に交わされた対話をまとめた一冊です。旅のあいだ、私たちは英語、日本語、中国語――異なる文化背景を持つ身体と意識を通じて、自然を体験し、その土地で暮らす人々と出会いながら、自然と創作の間にある偶然性、合理性、そして捕えがたい魅力について思索しました。

このzineは、旅をともにした仲間との対話形式で記録を残したいと考えています。

私にとって、旅は物語性を帯びた日常の抜け落ちた空白であり、いわば生活の中に偶然起こるような「切り取られた時空」です。旅から戻った後の対話を通じ、身体の経験や写真に残る視覚記憶だけでなく、旅の中で経験した瞬間に思想の軌跡が変わるあの刹那も記録しようと試みました。
その刹那とは、満天の星空を見上げた瞬間であり、仲間との雑談の中で創作の本質に近づく言葉がふと浮かんだときであり、一本の木の形から次の作品の出発点を思い描いたとき、あるいは滝に反射した光を見て創作をやめてしまおうかと思ったときでもあります。

こうした瞬間を記録する手段として「対話」を選びました。
対話では、私は最も馴染みのあるけれど完全には操れない母語、中国語を用い、不慣れだがそこから新しい思考を引き出せる言語としての日本語も使います。さらに、この内容を多くの人と共有するために、子どもの頃から学んできたけれど正しい口語を使いこなせたとは言えない英語にも翻訳していきます。

言語はしばしば、抽象的な思考を具体化する手段と認識されます。しかし対話を重ねる中で、むしろ言語化とは「抽象化」のプロセスなのではないかと感じました。頭に浮かぶ情景に合う語彙や文章を探して整理し、それを相手に伝えられそうな言葉のかたちに整える。この過程では意図する情景の細かいところが失われがちで、実際に伝わる意味がどれほど相手に届くかは測り知れません。しかし同時に、相手の背景や立場を意識し、適切な言語を選ぶことで、その瞬間に新たな意味が生まれます。言葉は本当に不思議な存在です。

私は母語である中国語で人と語り、母語ではない日本語でも人と語ります。その対話を振り返り編集すると、言葉が足りず、「言わんとすること」が伝わらない瞬間がいつでも訪れます。特に日本語での対話では、意味のすれ違いやズレが避け難く起こります。しかし、それこそが実験的に起こる対話の一部だと思います。言語そのものが個々人の理解を介して事実と隔たりながら伝わる。三つの言語の間を行き来することで、伝える意味にさらなるズレが生まれるかもしれません。そのズレの隙間から、新しい意味が生まれることを私は期待しています。対話を三言語で記録することで、多くの人に読んでもらい、そのずれが続いていくことを願っています。

インタビュー
 

和歌山での旅の体験をもとに、共に旅をした5人の仲間にインタビューを行いました。
このインタビューでは、「一人の言語で具象化できない現実を、対話を通して再現する」ことを目的としました。

最も印象的な身体的記憶とか、「自然」とは何かとかにテーマにして自由にしゃべてもらい、必要に応じて追加の問いを行いました。
対話を通じて、彼らの体験・記憶・創作に対する考え方を探りました。

編集・レイアウト
 

インタビューは日本語・中国語・英語の三言語で行われました。
録音した内容を文字起こしした後、テーマがより明確に伝わるように一部を編集・削減し、
最終的に日・中・英の三言語に翻訳して構成しました。
また、記事として読みやすくするために、新聞や雑誌のようなレイアウトでデザインしました。

さらに、二色のリソグラフ印刷を実現するために分版を行いました。

​印刷・製本

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